「百色百語」について SYUTA 


Gallery Nayutaでの展示は2020年に続き2回目になります。

前回は新型コロナウィルス感染者の第一波が収束した頃で、先行きが不安な時期でした。Artist/Pharmacistとしての自分ができることを考え、コロナのことを風刺画的にまとめ『COVID-19 Landscape of Pandemic-2020』を発表しました。

 薬剤師法の総則 第一条、薬剤師の任務:「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」とあります。薬剤師としての任務から科学、社会、日常の視点からパンデミックを多面的に取り上げ、視覚から感覚的に捉えられるようピクトグラムで表現し展示しました。

 

100色100語は、私が続けている制作テーマのひとつです。

幼児教育の先生から、色にはそれぞれ名前があり、沢山の色を使うと語彙を増やすのには良い影響があるという話を伺いました。それを機に、既成で100色存在する色紙や、糸などを使った作品の制作を始めました。同一素材の100色を組み合わせることで、同じ形なのに異なる色、みんな一緒なのにみんな異なることを意味しています。

今回の展示では、「見えること」を「脳が認識すること」が組み込まれています。

眼の機能は、光を眼球の角膜・水晶体により、さらに虹彩で光の絞り作用を受け、網膜の光受容体に達します。

光受容体(網膜)に光(光子)が達すると、光が衝突したエネルギーは電気エネルギーに転換され、脳の視神経へ伝達していきます。

脳の後頭部あたりに位置する一次視覚野(V1)は、最も単純で最初に活動する部位で、物体に関する情報の処理に特化し、パターン認識をします。パターン認識とは自然情報処理のひとつの方法で、雑多な画像情報の中から、一定の規則や意味を持つ対象を選別して取り出す処理能力のことです。つまり、丸や三角、四角などの単純な図形を区別できる能力になります。

V1で認識された情報は、V2V5と電気信号として脳の中を伝わり、最終的にモノを認識することができます。単純な図形を並べることで視覚へ刺激を与え、鑑賞される方が見えるものから想像を膨らませる作品を創りました。

 

昨年からは、よりスケールの大きいインスタレーションでも、反射と影、光の透過を加えて展示構成しています。

                              2020年~現在 杜の虹彩 長野県茅野市蓼科高原


個々の作品解説

 

n  Bird's Eye (Line Collage)

無数の線が描かれた紙を帯状に切ってコラージュした作品。私の活動のひとつである 障害のある方々との美術。彼らの制作を補助する自助具を作る社会福祉法人のメンバーと出会ったことから、電動回転式の装置を以前創りました。

 

 

n  100100語 RING

小さな丸い形状は、昨年の秋に小指にできた小さな良性腫瘍(イボ)がヒントになりました。有茎血管拡張性肉芽種という直径7㎜の赤い丸い腫瘍は、エノキダケのような形状で、あたかも別な生命体が小指に生えたようでした。腫瘍は、約3か月で急速に大きくなり少し萎んだところで、切除されました。

 透け感を出すために、色紙をパラフィンに浸して自作しています。電子顕微鏡で検査する病理切片をパラフィンで固定することとも共通点はあるかもしれません。小さな丸い集合は、生命体をイメージしています。

 

n  百色百足

 

 生命体を想起する作品として百足=ムカデと命名しました。50100本の脚を持つムカデは実在しないらしいですが、この作品は100本の脚で構成しています。

(SYUTA/三友周太)


SYUTA展「百色百語」

SYUTA Exhibition [ hundred colours have hundred words ]

2023. 1.27(Fri)-2.5(Sun)  

会期中無休 Open Everyday