
古代から続く自然信仰は、日本人の心の奥深くに、今もなお静かに刻まれているように思います。
私は、宮崎を祖に持ち、奈良・吉野で林業に携わってきた家系に生まれました。けれどこれまで、その出自に向き合い、それを作品として形にすることはできずにいました。人生の折り返し地点を過ぎ、残せるものに限りが見えはじめた今、あらためて自分の根源にあるものを見つめ直し、形にして残したいと思うようになりました。
長野県・諏訪地域での作品制作を通して出会ったのが、この地に古くから伝わる土着神「ミシャグジ」です。縄文時代にまで遡るとも言われるこの信仰には、意味のはっきりとしない神事や風習が今もなお息づいています。その姿に、幼い頃、祖父母から聞いた、よくわからない俗信や言い伝えが重なって見えました。知らず知らずのうちに受け継いでいる、言葉にならない記憶や感覚。それらの中にこそ、土地と人との関係の本質が潜んでいるように思えてなりません。
今回の作品では、日本神話が記紀に記される以前の時代から、人々の営みの痕跡が残る地で、御神木や、神域とされる場所に生える木々を撮影の対象としました。祈りや願いは、直接的に木々に刻まれるものではありません。しかし、長い時間の中で蓄積されてきた想いや気配は、確かにそこにあると感じています。私は、そうした不可視の祈りの痕跡や気配を、今回の作品の中にほんのわずかでも映し出すことができればと願っています。
(倉谷拓朴)
YORIGAMI -Devine Spirits in the Trees-
Animism, or the culture of worshipping nature, seems to have been settled deeply in the hearts of the Japanese people over the millennia.
In my latest series, I photographed sacred trees and trees that grow in areas considered sacred, where traces of people's everyday activities have remained since before Japanese mythology was recorded in the official chroniclesof Japan. Prayers and wishes are not directly engraved on trees. However, I feel that trees certainly have embraced feelings and signs that have surrounded such trees over a long period of time. I hope to be able to reflect even the slightest traces or signs of such invisible prayers through these works of mine.
(Takuboku Kuratani)

倉谷拓朴 (くらたに・たくぼく)
1977 年大阪府生まれ。立命館大学理工学部光工学科中退。大学では量子力学を学ぶが、写真に興味を持ち写真家を志す。その後、東京綜合写真専 門学校入学、2003年卒業。遺影写真を撮影、古い家族写真を収集するなど、写真を媒介にした人々・土地とのコミュニケーションを作品とする。一定の期間地域に滞在し歴史や文化をリサーチしたシリーズ、フォトグラムというカメラを用いない技法を用いて、福島の植物や小動物を定着した作品など。「生と死」 と 「記憶」、「目には見えないもの」 を制作のテーマとしている。
2022 「Black&Blue」 Gallery Nayuta(東京)
2021 「BLUE PERIOD」 諏訪市美術館(長野)
2019 「その森のできごと-さくら-」 Gallery Nayuta(東京)
2016 「shine」 coal pit(福島)
2015 「その森のできごと#02」 雅景錘(京都)
2014 「Last Portrait Project」(「横尾忠則展 肖像図鑑HUMAN ICONS」関連企画) 川崎市市民ミュージアム(神奈川)
2013 「その森のできごと」 雅景錘(京都)
2012 「その森のできごと」 mujikobo(神奈川)
2007 「Myoukayama Photo Studio」 フタバ画廊(東京)
2006 「steal sand」 フタバ画廊(東京)
グループ展(抜粋)
2025 「柳川現代美術計画Ⅲ」 北原白秋生家、旧戸島家、旧綿貫家、水都やながわ、柳川藩主立花邸等 (福岡)
2024 「And Again 2」 諏訪市美術館(長野)
2024 「柳川現代美術計画Ⅱ」 北原白秋生家、旧戸島家、旧綿貫家、水都やながわ、柳川藩主立花邸等 (福岡)
2019 「バウハウスへの眼差しEXPERIMENTS」 東京綜合写真専門学校(神奈川)
2018 「草木の囁き」 Gallery Nayuta(東京)
2016 「shine」 <Fukushima Art point iwaki 芸術祭「玄玄天」>(福島)
2015 「snow country」 <越後妻有アートトリエンナーレ2015>(新潟)
2015 「黄金町通路:記録」〈倉谷拓朴/ポール・モンドック二人展〉 黄金町アートセンターSITE-A(神奈川)
2012 「その森のできごと」 〈越後妻有アートトリエンナーレ2012〉(新潟)
2009 「Last Portrait」 〈越後妻有アートトリエンナーレ2009〉(新潟)
2006 「名ヶ山写真館」 〈越後妻有アートトリエンナーレ2006〉(新潟)
2003 「庭石」 〈越後妻有アートトリエンナーレ2003〉(新潟)
その他にART FAIRへの出品やワークショップの開催などを活動として行なっている。
倉谷拓朴展「依り神」
Takuboku Kuratani Exhibition[YORIGAMI一Divine Spirits in the Trees]
2025. 7. 21 (Mon) - 8. 11(Mon)
12:00 - 19:00 Lastday - 17:00
休廊日/水曜、7月31日 Closed on Wednesday and 7.31
